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(映画)『イングロリアス・バスターズ』(2009年 クエンティン・タランティーノ) [映画]

『デス・プルーフ』でタランティーノは、女四人の会話を延々と撮っていたが、この映画は、その差し向かって会話する場面が重要な意味を持つ。
第一章では、ナチの将校が、フランスの農夫と牛乳を飲みながら会話を進めていくうちに、ユダヤ人を床下に匿っていることを見破る。第三章においては、第一章で難を逃れた少女が長じて、ドイツの戦功をあげた若者に気に入られ、ナチの将校が集う食事の席に招かれる。そこでいきなり親の仇と再開し、そうとは知らぬ相手と会話しながらデザートを食べるはめになる。第四章では、バアで同じテーブルにつく英国のスパイが、ドイツの将校に正体を見破られまいと、必死でとりつくろう。
戦争は双方に悲惨な結果しかもたらさない、というメッセージをタランティーノが真面目に訴えているとは思わないが、これまで米国の戦争映画の中で悪として描かれてきたナチス以上に、米兵集団「バスターズ」は残酷で、アホだ。彼らを嬉々として描くところがタランティーノ。似非イタリア人に化けた米兵たちは抱腹絶倒。
その他に、この映画にはロマンスという柱もある。
映画館主の女性と、その映画館で働く黒人。黒人はスクリーンに映る彼女からの命令に従い、フィルムに火をつけ、彼女に殉じる。(フィルムが発火しやすい例示として出た映画は、ヒチコックの『サボタージュ』だろう。ナチスをあざ笑うフィルムを撮って、観客に見せ付けるという設定といい、スクリーン裏という映画と映画館を小道具としてうまく使っていた。)一方映写室に居る女は、部屋を突然訪れたナチスの将校に一瞬心を許してしまうことで、自らも殺されることになってしまう。彼女が倒れる様を上から撮った画面は恋愛の美しさをそのまま表象しているかのような画面だった。
場面をより強調する効果をあげる--時にはアクが強すぎるほどに--さまざまなタイプの音楽も印象的。
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