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(B)『美と破壊の女優 京マチ子』(北村匡平著 筑摩選書刊) [本]

過去の映画を見る環境が整ってきたことによって、若い人でも斯様な研究ができてしまうという見本のようなもの。
著者は『いとはん物語』の京マチ子の変わりぶりに驚いたことをきっかけに、彼女の映画を「変身」という主題で分析することを思いついたようだ。この視点は、わかりやすく、納得性が高い。なぜなら、映画会社、すなわち大映の永田雅一社長が彼女をそのように売り出そうとしていたから。
著者が丹念に当時の新聞、雑誌記事をあたったことで、その戦略及び世間での受容のされ方が見えてくる。映画会社が女優の見せ方、売り方に気を配っていたのだ。当の京マチ子はそれに素直に乗っていた。多くの巨匠監督との仕事も、彼女が望んでそのような機会を求めたのではなく、監督の方から大映に来て、彼女を起用した結果なのだ。彼女が指向していたのは、そこで最善の演技をするということだけで、役者として演じることにすべてを捧げた姿が浮かび上がってくる。非常に稀有な女優であったといえる。

先だっての「京マチ子映画祭」のパンフレットに、現在の彼女が書いた手書きの文章が載っていたのは驚くとともに感激することしきり。
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サンフランシスコ人

京マチ子の追悼上映?

http://www.cia.edu/cinematheque/film-schedule/2019/08/rashomon

http://www.artsinohio.com/event/28276-rashomon

『羅生門』....8/16 & 8/17に、Cleveland Institute of Art (クリーブランド芸術学院)で上映...
by サンフランシスコ人 (2019-07-09 07:29) 

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