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(映画)『真夜中の顔』(1958年 宇野重吉) [映画]

冒頭、天井で廻っている扇風機のアップからキャメラが下を向くと、ヌード踊り子--当時の--がギター演奏にあわせて踊っている様子が写される。(音楽にはコンガも入っていたが。)
最初から、緊張感漂う語り口のこの作品は、バアに出入りする人々の一夜の様子を描くという『たそがれ酒場』的な設定だが、宇野重吉監督は、さすがに映画表現を意識していて、新聞社の社長が愛人と寝ているところを電話やタバコを持つ手だけでみせる--社長の声は宇野本人--とか、最後女がパトカーを見送る場面など、決して演劇的なワンセットドラマにこだわっているわけではない。
最初にヒロインが死んでしまうので驚くが、宇野人脈というのか、バアに集うさまざまな職業の人たち--政治家の卵、政界の黒幕、役人、新聞記者、編集長、ヤクザ、女給など--を演じる役者陣が適材適所という感じで、中でも冷静なヤクザを演じる梅野泰靖がいい味を出していた。(手下の芦田伸介や内藤武敏は小物扱い。)唯一、主役格の三國は、殴られても抵抗できず、もっとひ弱な感じの人がよかったのではというくらい。
円く収まるかに思われた流れが、全体を支配する役割の政治家の卵が殺されるところで、突如変わる。ここの変わり目は、もっとじっくり情感をこめるように見せてもよかったのではないか。
鳴り響くジャズ音楽が雰囲気を盛り上げていた。
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