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(V)『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017年 ショーン・ベイカー) [ヴィデオ]

先日の講演会で、丸山健二が抑制の効いた描写例として挙げて絶賛していた映画。それまで聞いたこともなかった作品で、丸山がこんな作品を見ているのかと吃驚した。
確かに、説明的な会話や描写がない。隣接する二軒のモーテルを遊び場にしている子供たちは、兄妹かと見ていたら、そこを住居にしている別の家族の子どもたちで、皆片親。この安モーテルは、働き口もままならない人たちが住居としていることがわかってきて、さらに近くにディズニーワールド--フロリダという題名なので--があるらしい、といったように次第に描かれている場所や人々ことがわかってくる仕掛け。(娘の友だちの誕生日を祝うため、花火がよく見える場所に連れていくが、あれもディズニーの花火なのだろう。)
母親が売春をしている場面を見せないといった省略だけでなく、ベイカー監督は、ひとつひとつの挿話に余韻を持たせず、子どもたちが遊んでいる姿や、大人たちが働いている姿を次々と挿入することで、流れを持たせていく。
子どもたちはこ憎らしく、屈託がない。太陽の光の下で、モーテルの派手な壁の色は高級ホテルと変わらないように見える。そのホテルに堂々と入って行って、食べた朝食は、母親にとって娘との別れの食事のつもりだったのだろう。そして、その子を泣かせるのは、やはり母親が悪いのだろうか。
母親の悪態が極まって、ガラス戸に生理ナプキンを貼り付ける場面は、これぞ米国人と震えた!
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