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(B)『完本 チャンバラ時代劇講座』(橋本治著 徳間書店刊) [本]

「忠臣蔵」の劇化を、まず江戸時代の『仮名手本忠臣蔵』から始め、我々が親しんでいる話は歴史物語として明治時代に出来たもので、それは時代劇が、立派な人物を描いて理想像を示すという時代の要請によって生まれたものの一つの例となる。
しかし、現実の世界が理想像を必要としなくなったときに、時代劇は終焉を迎え、「忠臣蔵」にとっては、それが昭和39年のNHK大河ドラマの『赤穂浪士』だった--これが「忠臣蔵」の決定版--と著者は言う。ヴィデオが残っていない現在、続く『太閤記』とともに、実際に見ていた著者の証言は貴重。
というように、この本は時代劇から日本人の意識の変遷を論じていて、昭和61年出版のこの本からすでに、著者の視点は定まっていた。時代劇の本なのに、なぜか『青春残酷物語』(昭和35年)まで登場し、「明白に日本の近代の分水嶺となる作品だった。」と書く。
男女の恋愛や、テレヴィなど、時代劇から離れて突き進む著者の思考の拡張は、この程度の量--二段組400頁--では、まだまだ足りない。
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