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(V)『赤い雪』(2019年 甲斐さやか) [ヴィデオ]

昔の事件を掘り起こすというのよくある話なれど、真実を暴くことが主眼ではない。三十年間、塗りの仕事をして心を落ち着かせてきた男が、ふとしたことから、弟が殺された記憶を噴出させてしまうさまを見せられる。また、事件を目撃していたと思しき加害者の娘も、やはり昔の記憶を思い出してしまう。反対側の立場だった二人が、子ども時代親から受けた仕打ちの記憶にたどり着くという相似が見事。
記者を殺す場面を見せないなど、説明を極力排する語り口はよく計算されていて、その延長にある結末だと納得。色味を抑えたと思しき画面、雪が降る島という舞台も含め、甲斐さやか監督のしたたかさ恐るべし。
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