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(CD)『Chimes of Freedom − The Songs of Bob Dylan』(2012年) [CD]

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アムネスティ・インターナショナルの設立とボブ・ディランのデビューはくしくも同じ年とのことで、アムネスティ50周年を記念して、ボブ・ディランのカヴァーアルバム4枚組!CDが発売された。当初、これまでのカヴァーの寄せ集めか、でも聴いたことがないのも入っているだろうから、のつもりで買ったのだが、実際手にしてみてびっくり。全73曲!!のうち、過去に発表されたのは二曲くらいで、後は新録音!!!
ジョニー・キャッシュの「いつもの朝に」もThe Avett Brothersが演奏と歌を加えた新ヴァージョンとなっている。選曲はどのように決めたのか知らないが、一曲も選曲されていないアルバムは最近の2、3作とあと一枚くらいで、満遍なくちらばっている上に、Paul Rodgers and Nils Lofgren「Abandoned Love」のように正規のアルバムに入っていないマニアックな曲も多い。(Tom Morello による濃い「Blind Willie McTell」もブートレッグシリーズだ。)
知らないミュージシャンの方が多かったが、期待はずれに感じたのは、バンドで派手にやるべき「Quinn the Eskimo」を弾き語りっぽくカヴァーしてしまったクリス・クリストファーソンくらい。Flogging Molly「時代は変わる」、Carolina Chocolate drops 「Political World」、Taj Mahal 「ボブ・ディランの115番目の夢」などは、そのミュージシャン色がしっかり刻印されていた。もっとヒップホップ的解釈があってもよかったと思うが、大きく色分けしてハードロックとカントリーアレンジでは、後者の方にいいものが多かった。(前者では例えば、The Gaslight Anthemが、後者ではSugarlandといった未知のグループがよかった。)中でもアイドル歌手らしいMiley Cyrusの「おれはさびしくなるよ」は演奏、声ともにすばらしい。この曲も含め『血の轍』から選ばれている曲が5曲もあったというのは、ミュージシャンの間で評価が高いということだろうか。「雨のバケツ」とか「きみは大きな存在」とか地味な曲がとりあげられている。
おなじみのミュージシャンは、それぞれ持ち味を出していて楽しい。マーク・ノップラーのディランの曲とは思えないアイリッシュトラッドアレンジ(『時代は変わる』から「哀しい別れ」)、ブライアン・フェリーの自身のディランカヴァーアルバムの続きのような「ボブ・ディランの夢」、シネイド・オコナーが嬉々としてカヴァーしている様子が浮かぶ、選曲も彼女らしい『Shot Of Love』の「Property of Jesus」、エリック・バードンの「Gotta Serve Somebody」、先日のライヴでも聴かせてくれたマリアンヌ・フェイスフルのファーストアルバムからのカヴァー「連れてってよ」、とてもびっくりしたのは、ピート・シーガーの「いつまでも若く」。コーラスを含めたバック演奏の力を借りているが、まだまだ現役という印象。ジャクソン・ブラウンの「Love Minus Zero/No Limit」もよかった。
未知のミュージシャンで一番気になったのは、「明日は遠く」というこれまた珍しい曲をカヴァーしたZee Avi。彼女のアルバムも聴いてみたい。
最後にディラン本人の「自由の鐘」が収録されているが、それならブルース・スプリングスティーンによるアムネスティのライヴ音源の同曲にするという案はなかったのだろうか。
ジャケットはまるで楳図かずおが描いたかのよう。

(CD)『唖蝉坊は生きている』(監修 藤田まさと) [CD]

オリジナルは昭和48年に発売。下記の本と重複しているところもあるが、各曲の添田知道の丁寧な解説が嬉しい。選曲もまだ唖蝉坊と名乗っていなかったころの初期の「壇の浦」から始まり、順番に重要曲が網羅されている。
録音に関する情報はないが、高田渡を除いて編曲者が佐伯としをとクレジットされており、このアルバムのためにいろんな歌い手を招いて新たに録音をしたのだろう。
バックの楽器は、昔を思いおこさせるクラリネットを使用したり、チェンバロや、「ラッパ節」ではトランペットを使ったりしてヴァラエティに富んでいる。
添田知道自身が歌っている三曲が聴き所で、浪曲師のような歌声は、他の人とは雰囲気が異なる。「都節」「のんき節」は一番しか歌っていないのが、残念。長いフルヴァージョンを聴きたかった。
三曲入っている高田渡のものは、当時既発であった彼のアルバムから採ったと思われるが、高田が原曲の歌詩をたとえば、「新わからない節」では、「ミニやマキシ」とか「ドルショック」「BG」などとその時代の言葉に代えていたことに今更ながら気づいた。(文士→テレビの変更は必要なかったと思うが。)唖蝉坊の歌を並べた中で聴くと、高田の歌は70年代フォークとはまったく異質であることもわかる。
あと、3、4曲は追加できたのではないかと思うが、これも同時に復刻された昭和43年発売の『大正の流行唄』(添田知道監修)には、ここに収録されていな唖蝉坊の歌がいくつか入っていて、重複を避けたのかもしれない。

(CD)『Christmas in the Heart』(Bob Dylan) [CD]

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クリスマスソングには興味がないが、ボブ・ディランだからと聴いたら、これがなかなかよい。15曲の中で知っているのは2曲。最初の「Here Comes Santa Claus」も類似曲を聴いたことがあるだけかもしれないので、そうなると「 Winter Wonderland」1曲だけ。ディランはラジオの選曲をするように、古いクリスマスソングを選んだのだろうか。(クレジットを見るとトラディッショナルは4曲)
いつものバンドメンバーに加えて、マンドリン、アコーディオン、ヴァイオリンを演奏するミュージシャンとコーラス隊で、美しい音楽が奏でられるところに、最近さらに低音がかってきたディランの荒れた声がかぶさるところが面白い。ディランはメロディーをくずさず、リズムに乗って歌っている。「Must Be Santa」なんて、ポーグスのアイリッシュパンク風の曲を早口で歌い、コーラス隊と掛け合っているとこは、笑いを禁じえない。
この曲を含む 「O' Come All Ye Faithful」あたりからの中盤は、アイルランド民謡風の曲が並び味わい深い。と思っていると、 「Christmas Island」というハワイアンが登場し、また度肝を抜かれる。ディランとハワイアン....この組み合わせは貴重だ。 最後は、賛美歌風の「O' Little Town of Bethlehem」で締めくくられる。
楽しんでいるディランの姿が浮かんできて、繰り返し聴きたくなる楽しいアルバムだ。
ジャケットの裏には、サンタクロースの格好をしたセクシーな女性の写真が。これもディランの冗談かと思ったら、50年代に活躍したBettie Pageというピンナップガールの写真だった。昨年亡くなったとのことで、追悼の意味もあるのか。

おまけがついているかと思って輸入版でデラックス・エディションを買ったが、紙箱にCDの他、ジャケットの絵のクリスマスカードと封筒が5セット付いていただけだった。米国人なら喜びそうだが、クリスマスカードなど出さないし、ならば、500円以上安い通常版でよかった。。。
このアルバムはFeeding America という、米国内で貧困者に食糧を供給する団体への寄付のために企画されたらしい。日本での売り上げは、日本で食糧が必要な人のために遣われればいいのに。

(CD)『俺たちに明日はない』(頭脳警察) [CD]

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91年の『歓喜の歌』以来18年ぶりの頭脳警察アルバム。しかし、曲作りと録音で2ヶ月もかかっていないだろう。すべて新曲。カヴァー曲と旧曲のリメイクでニューアルバムとした甲斐バンドとは一線を画す。あわてて作ったのではない。18年分蓄えていたものが、短期間で形になったのだ。熟成と瞬発力。
頭脳警察の『CACA』のような前シングル『時代はサーカスの象に乗って』のような重々しさがない。『7』のように、PANTAとトシの演奏にこだわってもいない。それどころか、トシのコンガの音がまったくといっていいほど聴こえない。「死んだら殺すぞ」でわずかに聴こえるが、あとはボーナストラックの「俺たちに明日はない」アーリーヴァージョンの琢己を加えた三人の演奏で聴こえるだけ。陽炎とのPANTAのニューアルバムといった衣装をまとっているが、歌の詞は、頭脳警察だ。「死んだら殺すぞ」の「糞コメンテター/似非ジャーナリスト/自称評論家/おまえらホント目障り」といった歌詞を見よ。PANTAは頭脳警察モードになったとたん、曲が出来るのだろう。
先日のトークで、PANTAは「重信房子を鏡として自分を見てる。二人の立場が逆だったとしても不思議ではなかった。」と発言していたが、それを表現した歌が「UNDERCOVER」だろう。「オレの隣りに奴がいる/おまえの後ろに奴がいる/オレの代わりに奴がいる/おまえの中にオレがいる」
個人的に好きなのは、「BRAINWASH」から「ヒトを喰った話」の流れ。今の日本を「バカ」といい、ツバを吐きかけるだけでなく、それに気づけという賢人の教えも包含する。
「赤の女王」は、タイトルからして重信房子を連想させるが、歌詞はさまざまな言葉で言い換えられ、意味はよくわからない。サビのないメロディーはわざと高揚感を抑えているように聴こえる。つづく「黒の図表」とともに、こういう曲を入れてしまうところが、またPANTAだ。
最後の「残照」は、これまでPANTAが作らなかったタイプの曲。頭脳警察の「サヴァイヴァーズ・バンケット」として聴いた。
スッと聴ける前半に比べて、後半はこれから聴く度にじわじわ沁みてくるのだろう。

(CD)『Live in London』(Leonard Cohen) [CD]

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もはや人前で歌うことはないのかと勝手に思っていたレナードコーエンが、昨年72歳にして突如大規模なワールドツアーを行い、とても驚いたと同時に興奮した。昨年の7月17日のロンドン公演をまるまる収録したDVDを速攻購入。CDは同じ内容だから、と思っていたのだが、やはり、コーエンの声を音だけで楽しみたくなり、結局CDも買ってしまう。
DVDは、動くコーエンにただただ見惚れた。歳をとっているからというだけでなく、声からイメージしていた強靭な印象はない。物静かで落ち着いた感じ。
バンドは、最近のスタジオアルバムの基本である、女性コーラス二人を前面にだしたアコースティック。ギターが時には三人、キーボード二人にベース、ドラムスという9人編成でありながら、コーエンのヴォーカルを引き立たせる控えめな演奏。
選曲は『Essential Leonard Cohen』そのままのような代表曲の羅列。一番新しいアルバム『Dear Heather』から一曲もないのが不思議だが、それ以外はほとんどのアルバムから選ばれている。(『Songs of Love and Hate』からもなかったのはたまたまか。)
映像を見ると、両手でマイクを抱え、歌詞を大切にしながら歌っているが、音だけ聴くと、曲ごとに詩のメッセージが一番伝わるような歌い方をしているように聴こえる。米国にデモクラシーがやってきたと歌う『Democracy』など、吐き捨てるように歌っている。また、「Take This Waltz」「Closing Time」のような楽しい曲は、ダンスの雰囲気が伝わってくる。曲の始めにその詩を朗読するというスタイルが何曲かあったが、「A Thousand Kisses Deep」のように朗読だけというのもあって、詩を大切にしているというのがわかる。DVDもCDもその場に居合わせているかのような幸せな気分に浸れる。
それにしても、禅僧侶の資格を持つコーエンであるのに、日本で歌うことはないのだろうか。たしかに映像を見れば、欧州と日本でのコーエン人気の彼我の差がよくわかるので、日本での公演は難しそうだとあきらめるしかないのだが。。。

(CD)『小さめシャツの女の子 公園でIT革命』(ニーネ) [CD]

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前作『Search and Destroy』から四年。ライヴで演奏していた曲が溜まってこうしてアルバムに結実したのは嬉しい。今回もニーネのトレードマークである「ロックを最初に聴いたときのワクワクするような気持ち」が音から滲みでている。一発録りではと思われる空気感がすばらしい。
歌詞も、大塚の日常生活の気持ちが歌われているが、四曲目の「endless_summer」から後ろは、厳しい毎日の中での大塚のつぶやきがより近く感じられる。
ホームページでPVも見られる「マカロンの歌」が秀逸。軽快なメロディーとギターのリフがすばらしい。マカロンを食べたいと歌っているが、マカロンなんて食べ物は、大塚の日常の中には存在する場所がない、必要ないこと歌っているように聴こえる。私はそんな日常を送る男に勝手にシンパシーを抱く。ライヴでまだ聴いたことがないので、ぜひ聴きたい。
最後の「心に火をつけてくれ」一旦終わったかに思えたら、突然サビがまた始まる昂揚感。ニーネの音楽が、聴くもの心に火をつけてくれる。
タイトルの意味不明さが、ニーネらしいが、一度聞いたら忘れらない素晴らしいタイトルの「スランプさん、自力で復活!!」をアルバム名にしてもよかったのでは。。

(CD)『東京ファミリーストーリー』(赤い疑惑) [CD]

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あいかわらずしょぼいジャケットでいいぞ、と聴き始めると、音は相当しっかりしていて、CDのフルサイズくらい長く、入魂感がひしひしと。機械で作ったトラックを鳴らしてラップ、という手法ではなく、バンド演奏にこだわり、ロックな歌も多く、ヒップホップのスタイルにはこだわっていない。ジャケットのようにタイトル曲は似非ラテンフレーヴァー。
しかし、何より歌詞がすばらしい。家族や自分の毎日の暮らしを、気負わずに素直に歌う。フリーターをしながら音楽活動をしているという現状を、肯定も否定も、楽観も悲観もするのではなく、ありのままに描写している。同世代の人々に、大いなる共感を呼ぶのはと思うのだが。
「なんとなく人生」は特に名曲。
「どこにいたって/どこかにいたって/オレがいきがって/一人前ぶったって/いつもどうしたって/そこにある/どうしても東京の家族」(「東京の家族」)

(CD)『POP LIFE』(豊田道倫) [CD]

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いきなりテープの回転数をあげたようなヴォーカルで始まり驚くが、この新アルバムは弾き語りで、最近ライヴで演ってきた余計なものをそぎ落としたような歌が並ぶ。最初の「言葉はあきた」もライヴで聴いた。「国も全部捨てて 気違いになれたら」というメジャーで発売したら、ピー音がかぶせられてしまう歌詞がさりげなく歌われてしまう。
女性の視点でで歌われる「散歩道」は、「夢なら醒めて」のような名曲で、女性歌手が今後挙ってカヴァーをしそう。そこから「夜のこころ」「プレイボーイブルー」(これも名曲)への流れは、豊田のライヴそのままの雰囲気で、ずっとひと続きになっている気持ちよさがある。二音を繰り返しながら、ベースコードが変わっていく豊田の曲の特徴が極まった感じ。クレジットをみると「プレイボーイブルー」はライヴ録音だが、違和感はなく、続けてスタジオ(自宅?)で録音されたのかと思った。七尾旅人が先日のライヴで、豊田は筒見京平に匹敵すると言っていたことにうなずける。
ささやくようなヴォーカルから、「五反田にて」のような腹の底から声をだすような歌、「まぼろしくん」のギターストロークなど、それぞれの曲が練られているという印象もある。爆音ノイズが10分続く「for you」(これも豊田らしい。)に続けての三曲は、ライヴのアンコールといった趣き。おなじみ「14番ホーム」、昨年の前アルバム発売記念ライヴの音源(久下のドラムが聴ける)「熱海にて」、最後にコーネリアスの「Star Fruits Surf Rider」のカヴァー。コーネリアスとは意外だが、この曲は構成が豊田の歌っぽい。まるで豊田の歌のように、静かに演奏される。

「POP LIFE」というタイトル曲はあるが、このアルバムの各曲は、豊田の生活、人々を見つめる視線から生まれたものだ。
バイト先の女の子のことを歌ったと思われる「まぼろしくん」。「散歩道」のファミリーマートや百均。「ピースミュージック」には、「電車の中にいると 時々周りのの人達の顔が イヤな感じに見える みんな死んでほしいなんて思ったりする」という歌詞がある。「五反田にて」にある「財布の中の一万円札を 崩したくないだけの暮らし」を、「POP LIFE」と呼んでしまうところがカッコいい。そして、その記録を録音してアルバムにして発売することが、生きる証とでもいうようなアルバム。「たった一行だけの詩を誰かにほめられたい それまで何でもいいのだ 虫のように生きる」(プレイボーイブルー)
「かくれんぼ」の歌詞ではないが、このアルバムがあれば「生きていける 働いてゆける ごまかしていける ひとりでも」。

(CD)『LAZY FELLOW』(藤井一彦) [CD]

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The Groovers の藤井一彦 弾き語りソロアルバムが出た。ソロライヴを始めたのは最近だが、今年のライヴで予告していたとおり、アルバムを作ってしまった。全曲感想。
「HELLO LAZY FELLOW」
ボブ・ディランを彷彿させるような言葉の放出。このスタイルが藤井の弾き語りソロのベストな形だろう。ギターも歌も同時録音と思われ、弾き語りぶりがすばらしい。このタイプの曲をもっと聴きたい。
「確信犯的ストレイシープ」
これは「ミスター・ディザイア」風で、本来ならバンドでやるタイプの曲。しかしギタープレイは聴き所満載。カッコいい。藤井は、カーネーションの直枝のように生ギターも電気ギターのように弾く。
「憂国の口笛」
憂国が夕刻にも聴こえるというのは、意識した言葉あそびか。これもバンドでやるスローな曲タイプといえるが、詩に重点をおいているところがソロ仕様。
「今を行け」
このアルバムはすべて生ギター一本弾き語りかと思いきや、この曲はもう一台生ギターがダビングされていた。二台の絡みがいい。
「ウェイティング・マン」
グルーヴァーズの曲をアルバムに入れる意味があるのか、と考えてしまうが、今の時代に改めて歌いなおしたいというメッセージがあるのかもしれない。バックのコンガも一彦が叩いているようだ。やはり名曲。
「MOON RIVER」
ライヴでも演っているので意外ではないが、録音までしてしまうとは。この曲をカヴァーする人たちは、歌っていて気持がよいから演るのではないかと想像するが、一彦の場合は、それ以上にギターが気持いいという雰囲気。スチール弦でなナイロン弦ギターで録音したらもっとよかったのではないか。
「Clover」
ムーンリバーでピークを迎えた流れから、最後の大団円へのブリッジとしては、少し弱い感はあるが、心の中に咲いている白詰草なんて心象風景を歌うパーソナルな曲で、何度も聴いていると味わい深い。
「サムタイム」
一彦の好きな四文字熟語がいくつか登場するところも含めて、一彦らしい歌詞。君に歌いかけているようではあるが、もう一人の自分に語りかけているイメージだろう。わりとあっさり終わってしまう。

普通のアルバム(一応、ライヴ会場とネット限定だが。)として売るには、もう2~3曲追加して欲しかった。おまけのピックが、The Groovers得意の、どこかでみたデザイン(Fで始まる。。)というのが嬉しい。第二弾も期待。

(CD)『Tell Tales Signs : Rare and Unreleased 1989-2006』(ボブ・ディラン) [CD]

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ブートレッグシリーズ第8弾。今回は、1989年の『Oh Mercy』から一番新しい『Modern Times』までの間の、アウトテイクや未発表曲、ライヴ演奏を集めたという年代面での新しさもさることながら、二枚組みのアルバムには、同じ曲が何曲か別アレンジで収められているというのが新機軸。これによって、レコーディングの際、いろんなヴァージョンを試していることがわかる。さすがにディスク2に入っている
「Dignity」のバンドでの性急な演奏など、セッションにすぎないといったものもあるが、冒頭の「Mississippi」のダニエル・ラノワとの生ギターヴァージョンや、「Everything Is Broken」の60年代のディランを彷彿させるようなバンドサウンドなど、オリジナルアルバムを上回る良いヴァージョンも耳につく。ディランは本当にその時の気まぐれでアルバム収録曲を決めているのかもしれない。
この二枚組アルバムは、曲の配置も練られていて、それぞれ「Mississippi」から始まったのち、収録されている曲が互いに対になっているようだ。まるで同じものを表と裏から見ているといった風に。
後ろの方にはライヴ演奏が何曲があって、それがどれもいい(「Ring Them Bells」!)が、ディスク1最後の「High Water」のロックな演奏をバックにシャウトするディランのヴォーカルに特に感動した。全く枯れていない。
個人的にはあまり趣味ではないのだが、「32-20 Blues」「Cocaine Blues」などブルース曲のカヴァーや、「Can't Escape From You」のレナード・コーエンを彷彿させる低音ヴォーカルなど、聴き所満載。ディスク2最後の「Corss The Green Mountain」は、静かに歌われる名曲で最後をしめくくるにふさわしい。
もちろん三枚組も聴きたいが、盤が一枚増えただけで、6倍以上にもなる価格設定についていけず残念。