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(B)『サレ・エ・ペペ 塩と胡椒』(四方田犬彦著 工作舎刊) [本]

料理に関する随筆。著者の外国での体験に基づく内容の部分は、すでに他の本でもおなじみだが、本作はいきなり、ユネスコの無形文化遺産となった「和食」なるものに異議申し立てをするところから始まる。そこで定義されている「和食」は、普段我々が親しんでいるものではないとの指摘から始まり、「国民料理」「国民食」なるものが定義される。前者は、日本であれば寿司が候補になりそうだが、十分な条件を満たしているとは言い難いところがあり、後者については、これまで誰も挙げなかったぶっかけ飯ではないかとの指摘がすこぶる斬新。
食に関する前著である『ひと皿の記憶』において、ニューヨークの食べ物をとり上げなかった理由の告白もある。彼の地では、ありとあらゆる食べ物があったが、どれもアメリカ的な変形を被っており、真正さを欠落していたから。米国の「国民食」はTVディナーという人もいる。
本の真ん中に橙色の紙の部分があり、著者が「執筆で忙しいときに作るものすごく簡単な料理」が挙げられている。最終章の「台所にいることの悦び」と併せて読むと、嬉々として料理をしている著者の姿が浮かんできて、勝手に親しみを感じてしまった。
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