SSブログ

(B)『ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件』(橋本治著 集英社刊) [本]

これは1983年に刊行されたものの再発。
著者に似た経歴の挿絵画家が探偵となって連続殺人事件を解決する話で、当時流行っていた横溝正史の『犬神家の一族』や『獄門島』を積極的に取り入れていので、軽い調子の語り口で、最後は本格推理の謎解きに進むのかと読んでいたら、結構深刻な内容--人が死ぬからという意味ではない--になってきて、殺人事件の起こった鬼頭家の人々の背景だけでなく、語り手である主人公の「暗い」過去まで描かれる。(人の性格を暗いと称するのは、80年代になって始まったとあって、そういわれるとそうかもしれない。)
主人公と主人公に探偵を依頼した彼女の二人が、鬼頭家を訪れなかったら、殺人事件は起こらなかったかもしれず、題名にある「ぼくらはなにをしたらよいか」よりも「ぼくらはなにをしたか」殺人事件といった趣き。
「なにをしたらよいか」というのは、作中に登場したあらゆる可能性を検討することで、その意味では、大学生たちが「なにをしたらよいか」を検討する『人工島戦記』にも「あるいは、ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかのこども百科」と副題を付けた理由については、巻末の「解説」で仲俣暁生が見事に分析してみせている。
著者が『虚無への供物』も参照していたところは、個人的に大いに注目。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。