SSブログ

(V)『水で書かれた物語』(1965年 吉田喜重) [ヴィデオ]

吉田監督の松竹退社後、そしてまた岡田茉莉子と結婚後の第一作。岡田主演の映画を撮るにあたり、温泉の入浴シーンは、岡田の人気を沸騰させた『芸者小夏』を意識したのではなどと想像もできる。(そんなことはないだろうが。)浅丘ルリ子もなかなか素晴らしいのだが、物語でも母親役の岡田にかなわないように、岡田のすべてを見透かしたかのような視線にやられる。
この作品は、人と人の絡みに徹底的に焦点があてられており、たとえば主人公の結婚式の場面がないし、二人がアパートを借りて引っ越す際も、引越しの様子は一切挿入されず、画面が変わるともう引越している。とりわけ最後の方は、息が詰まるような濃密が画面が続く。
夫が死ぬのは病気によるもので、戦争で寡婦になったわけではないが、金持の旦那と関係を続ける女は、ある種、戦後の男女関係を表象している。まだ開発の手が延びていない山の湖でその関係に終止符が打たれるとき、古い日本も終わったということか。主人公の心の中では、湖に浮かぶ日傘のように永遠に浮かび続けるのだろうが。
主人公が夢に見る幻想シーンの挿入など、そのまでの吉田には見られなかった作風で、メジャーな映画会社を離れたということだけでなく、新たな映画作りを始めることとなった出発点として重要な作品。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0