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(V)『戒厳令』(1972年 吉田喜重) [ヴィデオ]

吉田は珍しく脚本に参加していない。別役単独の脚本だからか、多分に演劇っぽい。5.15や2.26の事件の場面などほんの少しだけでほとんどないに等しい。
そのまま舞台でできそうだが、吉田は会話シーンをきちんと切り返しで撮るなど、オーソドックスな映画作法を実践している。
もうひとつ注目すべきは、それまで女性中心の映画を撮っていた吉田が、この作品では男性中心の世界を描いていることだ。主人公の北一輝は、実際に作戦指導をしているわけではない。この映画の中ではほとんど何もしていない。彼の思想が結果的に事件を起こしたことになり、悲劇が訪れる。それは北にとって、国家や天皇からあ裏切られたということなのだが、映像は淡々ととられ、悲劇性は帯びない。なぜなら北の理想とする「戒厳令」とは何かというテーマがもうひとつあるからなのだ。三国以外の俳優をあまり重視していないような配役、演出はそういう狙いもあってのことだろう。
ときどき挿入さえたシンセサイザーの音楽がオーソドックスな映像の中で異化効果をあげている。


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