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(B)『我、涙してうずくまり』(丸山健二著 岩波書店) [本]

体裁は独立した四篇の中篇だが、一人称で書かれた主人公は同一人物と看做せる。
孤児として北の施設で育ち、結婚したものの性格の違いを理由に妻から離婚を言い渡され、今は村営住宅に住み、会社勤めはしているものの、人と極力交わらないようにしている四十代の男が主人公。
著者久々の私小説形式による文章は、他の人との会話が登場しない設定の中で、主人公一人の気持ちの動きを突き詰める。主人公は毎度著者おなじみの境遇や性格だが、この物語は主人公が破滅へと向かうことなく、最終篇で少女と熊というおとぎ話の登場人物によって未来へとつながる。私小説という形式がここで改めて生きる。
文字と文字の間に、通常より間隔が少し大きくとってあるように見えた箇所があったが、単なる印刷の都合か。。


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aisym

日本語の美しい小説でした。内容はとても暗い、40男の独白でしたが、投げ出すこともできず、読んでしまったのは結局、その孤独に、共感するところがあったからだと思います。
by aisym (2013-04-12 23:59) 

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