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(B)『日活ロマンポルノ 性の美学と政治学』(志村三代子、ヨハン・ノルドストロム、鳩飼未緒編 水声社刊) [本]

「ロマンポルノの学術論集」。文字通り、各論文を執筆している人たちが皆大学の先生で、それゆえ「政治学」などという大げさな題名がついているのだろう。(当時の反体制的な姿勢や検閲を念頭においているらしい。)と構えは厳めしいが、収録作いずれも切り口が新しく、非常に興味深く読んだ。
谷ナオミ論は、彼女が演技者、観客からの受容、会社の方針という多面的な視点から作り上げられた奇跡的な存在であったことが理解でき、『(秘)女郎責め地獄』に取り入れられた文楽の具体的な分析は、田中監督の意図したことがわかり、再見せずにはいられない。神代映画の音楽については、普段から気になっていたところを見事に文章化してくれた。
そして、この本の白眉といえるのは、各執筆者の専門分野を生かした二つの論文。前者は桐かおるの作品を取り上げた「レズビアン・ストリップ」に関するもの、後者は映画館が「ハッテン場」として活用されてきたことを論じるもの。とりわけ後者は映画の枠組みを超えているが、桃色映画ならではの部分であり、研究対象として取り上げるのは大したもの。(実地研究が不足している感はあるが。)
日活がスウェーデンで作った--その前に四作品他の会社が同様の体制で作っていたとは初めて知った--二作についての製作状況についても、現地の当事者を探してよく調べたと感心するとともに、下記部分は、ロマンポルノ全体を表象するものとして、すこぶる重要。
「『レイプによって女性の中の性的な欲望が目覚める』といった神話は、日本の性的な映画が持つ独特の文脈であろう」
巻末の関係者へのインタヴュウもいずれも興味深く読んだが、中でも根岸監督が、ロマンポルノについて語っているのはあまり目にしたことがなく、全体を客観的に分析している視点も含め面白かった。
また、ロマンポルノの末期に入社してまだ現役の日活社員三名は、彼らのような人が残っているゆえに、最近発売されているヴィデオ化作の中に、思わず飛びつきたくなるものが含まれているのかと納得。
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