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(V)『葛城事件』(2016年 赤堀雅秋) [ヴィデオ]

かつては正しいと信じられていた幸せな家庭を築くための要素や考え方は、今やもう通用しないという生易しいものではなく、この作品は父親の押しつけによって家庭が崩壊する様を徹底的に描く。「一戸建てを持つ」「子どもには自分の商売を継がせない」など、一見罪はなさそうだが、「日本人は」などという紋切型の口調で話す--家族もその影響を受けている--父親は、最後まで自分のせいで家族が崩壊したとは思っていない。
死刑囚と結婚する女性を登場させた理由は、刑務所に居る次男の様子を見せるのと、父親のダメさ加減を強調するためと思われるが、彼女の存在がこの家族に何の影響も与えなかったことが、誤った考えに囚われている人が引き起こす罪の深さを表しているとも言える。
家を建てたときに将来を夢見て植えたみかんの木で首をくくることになるとは、大した皮肉だが、失敗したと見るやすぐ自分の暮らしに戻ってしまうところは、まるで反省していないこの父親らしい秀逸な幕。
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