（V）『欲しがり奈々ちゃん ひとくち、ちょうだい』（2021年 城定秀夫）

他人のものだと思うと何でも自分のものにしたい性格の主人公、奈々ちゃん。アルバイトを始めたコンビニで店長が指輪をしていると見るや、さっそくホテルに誘う。高校時代に友だちの彼氏を取った回想も交えながら、快調に話が進む。
ところがコンビニで働いている店長の奥さんが、突然奈々ちゃんの父親と結婚すると言い出したところから、物語は急展開。実は、彼女は苗字が同じなだけで、店長と何の関係もなく、店長が一方的にストーカー的行為をはたらいていただけだった。彼女の写真を密かに撮って部屋に貼っている描写は、城定作品でお馴染みの世界と見ていたのだが、この作品城定は脚本を書いていなかったことを最後に知った。
そのせいか、最後が普通のハッピイエンドっぽく終わってしまうところが、物足りない感じもあった。自分がほしくなった人が、実は他人のものではなかったところから、彼女の病気とも言える性格が治ったことを強調してもよかったのでは。
最後の画面にもしっかり写り込んでいるリーゼントヘアの新しい店長がよかった。ロケーションはお馴染みの木更津あたりと思われる。（奈々ちゃんの家は、古い一軒家。）