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(B)『日没』(桐野夏生著 岩波現代文庫) [本]

創作物の不道徳に対する、昨今の世の中の不寛容な風潮に警鐘を鳴らすのに、小説という手法が有効であることを実証している。
主人公の一人称で書かれているため、彼女が見聞きした話が最後まで真実かどうかわからず、療養所で関わった人たちの本性も不明のまま。「エンタメ」小説と開き直って、主人公が自由を勝ち取る話にしてもよかったと思うのだが、
結末も曖昧なまま--彼女が死んでしまうのか、生き延びるのか--にしたのは、著者が小説中で主人公に語らせた「良い小説」の定義、すなわち「自分に正直に」「自分が書きたいことしか考えていない」ということなのだろう。
ずっと療養所に閉じ込められている主人公の閉塞感を、読んでいる間ずっと感じて苦しくなった。
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