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(映画)『オッペンハイマー』(2023年 クリストファー・ノーラン) [映画]

最初の一時間は、若き主人公の勉学時代を経て、ロスアラモスの原爆開発施設を立ち上げるまで。次の一時間は、原爆開発に成功するまで。そして最後は、最初から少しずつ見せていた共産主義者の疑いで主人公が尋問される顛末を見せる。
皆が好む成功物語としては、最初の二時間で十分だが、今の世の中それほど単純ではなく、またノーラン監督自身が、個人の複雑な気持ちの葛藤を描きたかったということだろう。
主人公が何を尋問されているのかわからない状況が最後になって次第にはっきりしてくる語り口はうまく、そこだけ白黒画面となっているのは、原爆開発の動的なドラマ以上に、静的な証言場面を見てほしいということか。アインシュタインが重要な役割を果たしていたが、これは事実なのだろうか。
往年の聖林映画のように、場面が変わっても背後でずっと音楽が鳴っている演出が気になった。
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(V)『殺人計画完了』(1956年 野口博志) [ヴィデオ]

男女が大阪駅から列車で、横浜へ行くところから始まる。脚本の陶山鉄は、関西から始めて、東京へ移動する設定がお気に入りなのだろうか。
二人は、車内、そして横浜からのタクシーと、移動途中で命を狙われる最初から緊張感のある流れ。いろんな手段で殺そうとするところが見どころのようで、ビルの屋上からブロックを落としたり、細工をしてガス栓をひねったり、地下鉄の駅--新橋--で突き落とそうとしたりするが、当然すべて未遂で終わる。
悪党団がいつも首領を中心に相談ばかりしていて、人数はたくさんいるが、ちょっと間が抜けた感じ。主人公が持っていたカバンの中に、彼が開発した新型ヒロポンが入っていたようだが、途中で川に捨ててしまって、小道具としての役割が中途半端だったし。
最後の撃ち合いでは、警察が踏み込んできて、残った悪者たちを一網打尽というのが普通だが、この作品は警官隊とさらに激しい撃ち合いをして、皆撃ち殺されてしまうという珍しい結末。
主人公を助けるヒロポン中毒の落とし胤には成長物語があったが、主人公には何もなく、肝心の主役の影が薄かった。
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(映画)『肉体の反抗』(1957年 野口博志) [映画]

神戸三宮から始まる。不良と付き合っていた学生の妹が、家を出て行方が分からなくなっていたところ、警察からの連絡で主人公である姉が横浜へ行ってみたら、海で溺れて死んでいたという吃驚な展開。そこから舞台は横浜になるのだが、主人公はバアで働きながら、犯人探しをする。
銀行に勤めていて、婚約者までいる彼女が、犯人と思しき男にいきなり抱かれて、つき合うようになる流れに、説得力が乏しいが、真相を暴くため、高級売春宿の女主人の息子を篭絡したところ、彼が本気になって彼女に協力する展開は面白い。
妹の復讐を強調するために、何度も妹の形見である真珠の腕輪がクロースアップされる。(ヒッチコックを意識しているのか。)
悪い奴を射殺してしまい逮捕された青年に向かって、主人公が待っているといったセリフは、愛しているからではなく、愛情とは別に体が彼を求めているという説明がどうやらこの作品の主題らしい。
それを説明するため、終わりの部分が冗長だった。
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(V)『美熟女 田園不倫づくし』(2018年 竹洞哲也) [ヴィデオ]

『田園日記 アソコで暮らそう』
『大人の同級生』の撮影に続けて、女優を替えてそのまま青森で撮影したと思しき作品。
長崎家の主人が、会社をクビになって--本人は早期退職と言っていたが--、一念発起家族を伴って、農業で暮らしを経てようと田舎へ引っ越す。妻--東京では若い劇団員と不倫をしていた--、長男--引きこもり--、長女は当然いやいやながらついてきたのだが、意外にも暮らしに慣れ、夫婦は仲睦まじさを取り戻す。
斯様な夢のような話もいいではないかと見ていたら、さすがにそれではドラマにならない。
結局、夫がうまく行きすぎていることが気に入らず、幸せをぶち壊すという、しょうもない彼のひとり相撲で終わってしまう。
娘だけは、田舎の好青年と結婚できて、移住も無駄ではなかったとしたいところだが、息子と娘がどうなったかは描かれずじまい。
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(V)『させ子の同棲日記』(2018年 竹洞哲也) [ヴィデオ]

『大人の同級生 させ子と初恋』
女性の脳内音声で始まったので小松公典脚本かと思ったら、深澤浩子だった。(たしかにそのあと脳内音声はなかった。)脳内音声の主が主人公であるはずで、たしかに物語は彼女が高校の同級生だった男のことが好きで、今でも--今や別の同級生と結婚している人妻だが--その気持ちが続いているというのが柱となっているのだけれど、彼女の出番はそれほど多くない。一方で、そんなこととは露知らず、邪魔をする形となってしまう同級生の女性の方が、主人公らしい扱いというのが面白い。
東京で失恋して、田舎へ戻って来た彼女が、父親と暮らす元彼氏が気になって、住み込んでいろいろ世話を焼く。彼女の自然体な様子と、農業をやっている--ネギの収穫!--田舎の人たちを見ているとほっとする。
男の気持ち--彼も主人公のことが好きだった--もわかった上で、身を引いて都会に帰っていく彼女の姿には、淋しさを跳ね飛ばす元気があった。
竹洞監督の青森ものは、ここから始まったか。
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(V)『武士道無残』(1960年 森川英太朗) [ヴィデオ]

主君が若くして死んでしまい、同年代の若者が初七日の内に殉死を命ぜられる。彼が不憫だと、嫂が彼を男にして、切腹の場に送り出すが、その時幕府から今後殉死を禁ずるとの命が届く。
意味のない規則に縛られた武士の不自由さと、主人公と嫂の恋愛がうまく絡めてある。最後まで高い緊張感が持続されているのは、俳優のうまさと、引きの画を組み合わせて、空間を見せるようにしていたから。二人が抱き合う場所が、松が植えられている浜辺という屋外というのも工夫されていた。
切腹時の等間隔に鳴り響く音を始めとする、真鍋の音楽もそれに貢献していた。
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(配信)矢野絢子@APIA40(04/26/2024) [配信ライヴ]

新アルバム『In Lake'ch』レコ発ライヴ。「インラケッチ」とは、古代マヤ文明の挨拶で、「あなたはわたし、わたしはあなた」という意味があるそう。
グランドピアノに座り、最初の曲はアルバムにも始めに入っているインスト曲「よろこび」。この曲は歌詞も書いたそうだが、録音スタジオ--高崎は群馬県です--のピアノの素晴らしい音に感動して、歌を入れなかったそう。
今回のアルバムは、9名のミュージシャンを招いて、それぞれとのデュオで録音。ライヴでは、そのうち三人を呼んで、三曲ずつをそれぞれと演奏した。
まずは、電気ギターのさいとうりょうじ。彼の弾くブルースっぽい音がぴったりな「やさしい檻」。矢野絢子得意の三拍子。
他に二曲演奏したのち、パーカッションの見谷聡一に交替。二人が喋っているところを、二画面分割で見せるとは、さすがアピアの配信は力が入っている。
見谷と演った曲は、どれもノリがよかったが、特に「delight」は楽しくていい曲だった。作曲はトランペットの黄啓傑。
休憩後は、いよいよ御大梅津和時登場。御大はいつになく、気さくにしゃべって場をなごませる。
突飛な音を入れるところは、やはり独特で、また、サックスだけでなく、名曲「Blue Blue Bird」では、ティンホイッスルを吹いていた。
梅津とも三曲演奏したのち、他の二人がステージに戻って、三人で三曲。「ダニーボーイのうた」は、みなが気ままな音を出し、フリージャズのような演奏だった。「みゅみゅみゅ」は締めの曲としてふさわしく、しっとりと終わった。
アンコールは、発売20周年だというデビュー曲の「てろてろ」。三人が加わるこの日限りの貴重なヴァージョン。
前回のアルバムから4年ぶりと、矢野にしては時間が開いてしまったが、疫禍を経て、自分でも予想のつかない方向に成長した新生矢野絢子が堪能できるアルバムとなった。(まだ聴いていないけど。)

1. よろこび 2. やさしい檻 3. 猫白宣言 4. なまけもののうた 5. ミンナゲンキカ。 6. バラバラ 7. delight /8. Contrast 9. Is love light or heavy? 10. Blue Blue Bird 11. ダニーボーイのうた 12. あいからいちばん遠い場所から 13. みゅみゅみゅ /en. てろてろ
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(V)『第8監房』(1956年 阿部豊) [ヴィデオ]

題名は、逮捕された主人公が収監される警察署の房の名前。軍隊で部下だった男が警官として、留置場の番をしていて、彼の手引きで主人公が一時間だけ房を抜け出すサスペンスがある。
突飛な点はそれだけでなく、ヒロインがしつこくつきまとってくるヤクザを拳銃で撃ち殺してしまうという意外さ。そのあと主人公がどう行動するかが見どころだったが、彼はあっさり逮捕され、女はヤクザたちによって殺されてしまう面白みのない展開。
そもそも、主人公が、軍隊で意地悪な上司を撃ち殺してしまったことをずっと悔いていたり、その上司の奥さんがヒロインという設定自体がよくなかったか。
留置場にいるさまざまな男たちや、捨て子の面倒も含めて、警察署が庶民に親しみやすい雰囲気を醸していたところが見どころか。
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(V)『逢魔の辻』(1938年 瀧澤英輔) [ヴィデオ]

前進座総出演の時代劇で、時は安政の大獄。主人公の青江金五郎は、幕府に務める三沢家の非嫡子だが、父親は彼に家を継がせたかったにもかかわらず、彼は家を出て浪人として暮らしている。彼が行きがかり上、役人を斬ってしまい、島送り--三宅島--となって三年間の務めを終えて戻ってきてから、世の流れ--桜田門外の変が起こる--に巻き込まれていくという話。
水戸藩を始めとする尊王攘夷派を厳しく取り締まる岡っ引きは、何かと主人公を目の仇にしているが、彼とても自らの務めを忠実に全うしている存在。主人公は「ひとりでは暮らしていけない世の中」だと、最後は薩摩藩士とともに京へ上っていく。幕末の世で、皆がそれぞれの本分を尽くしているのが肝。
義兄と岡っ引きが主人公を追いかけるところで、映画が終わり、「江戸の巻」終わりという字幕がでたのは、後半の「京の巻」も予定されていたと思しいが、作られた形跡が見当たらない。
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(V)『色情霊 カノジョノシタタリ』(2019年 門田恭弥) [ヴィデオ]

引っ越したアパートの部屋に女性の幽霊が出て、若い男がその虜になってしまうという、基本的なところはよくある話だが、男三人に犯されて絶望して死んだと思わせておいて、実はそうではない悪い女だったという展開がなるほどと思わせ、面白かった。
女装した川瀬陽太が霊媒師というのが可笑しかったが、なるほど彼ぐらい強そうでないと、戦うことはできなかった。女優陣はもちろんだが、若者三人の配役もよかった。
回想場面を入れるのは無駄ではないかと思ったが、あとの展開を考えると必要だったし、最小限にとどめていたのは、十分考えた末の挿入ということだろう。
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