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(V)『名もなく貧しく美しく』(1961年 松山善三) [ヴィデオ]

何故、松山監督は、最後に主人公を事故で死なせたのか。斯様な題名の作品であれば、生き続けてこそと思うのだが。
話すことができない夫婦の会話は、字幕で内容が示されるが、背後に鳴る音楽がセリフ代わりに重要な役割を果たす。音楽は林光で、普通の綺麗な管弦楽音楽とは異なる、特徴ある旋律がよい効果を出していた。死のうとした主人公を追って、電車に乗った夫が彼女を見つけ、二人が異なる車両の前と後ろで、ガラス越しに会話する場面が映画の白眉。主人公に冷たい姉と弟の存在もよかった。
昭和30年代前半の、人々の暮らしがよくでていただけに、かえすがえすも、主人公を殺したことで映画が台無しになってしまったのが残念でならない。
成瀬作品の脚本を書いていた縁か、撮影・照明・美術は成瀬組の面々。
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