SSブログ

(映画)『戦雲(いくさふむ)』(2024年 三上智恵) [映画]

本ドキュメンタリーは、ここ6、7年くらいの間、沖縄の各島に防衛省がミサイル配備を進めている様子に焦点を当てている。
まず、順番に与那国島、宮古島、石垣島の現状を、それぞれに暮らす人たちの視点から紹介した上で、そのあとは、それらの人を往還する形で、状況の進展を見せ、沖縄本島の状況も触れている。
斯様な内容であれば、専門家のインタヴュウで本当にミサイルが必要なのかを補強するものだが、住む人々の反応をつないで行けば、そんなものは必要ないという三上監督の姿勢はあっぱれ。
憎むべき組織として対峙している防衛省についても、与那国島のハーリー競争で、漕ぎ手に加わった自衛隊員たちを写すことで、我々は国に向かって声を上げていかなければいけないことに気づかされる。このハーリー競争の場面は、重苦しい話の閑話休題にもなっていて、とても楽しい。
また、ひとりカジキ採り挑む「老人と海」の主人公のような年取った漁師は、自衛隊について必ずしも反対ではない。しかし、見る者は彼の生活を奪うことは許されないという思いでいっぱいになるのだが。彼が、足のケガが癒えたのち、初めてカジキを仕留める場面を最後に持ってきたのは、島で暮らす人々を活写するこの作品の、見事な大団円となっていた。
楽器の数および音数の少ない印象的な音楽は、何と勝井祐二だった。
nice!(0)  コメント(0)