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(映画)『かづゑ的』(2023年 熊谷博子) [映画]

長島愛生園に暮らす、宮﨑かづゑさんと夫の姿を2014年ごろから2020年まで撮影したドキュメンタリー。
愛生園については、さまざまな機会に耳にしてきたが、長島という場所が瀬戸内海に浮かぶ島だったとはこの作品で初めて知った。患者を乗せた船が着いた桟橋の遺構を見て、本当に厳しく隔離された場所だったことがわかる。使われていない昔の建物などを含めて、これらは世界遺産として保全すべき施設だろう。
今でも園に留まる人たちは、らい病--かづゑさんは、ハンセン博士が発見するよりずっと前からあった病気だからという理由でハンセン病と言わない--は治っているが、後遺症があったり、かづゑさんのように80年も暮らして他に行く理由がないから。
撮影されることを了承したのだから、自分のすべてを撮ってほしいというかづゑさんは、カメラの前でよく涙をこぼす。その涙は熊谷監督の優しい存在があればこそなのだが、普通の人の何倍もの涙の重みを、見る者はひしひしと感じる。
映画が進むにつれ、明瞭に話す、頭脳明晰なかづゑさんの剽軽な部分も見えてきて、さらに夫婦で暮らしを立てていく『人生フルーツ』の二人のようにも感じられて来た。『人生フルーツ』のごとく、夫は亡くなってしまい、おそらく疫病下であったため、骨壺となって初めて対面したと思われる哀しい場面が最後にある。
しかし、上映後の監督の話で、かづゑさんはその後も元気で、最近は水彩画に取り組んでいるという話を聞き、「かづゑさん的」人生を謳歌している姿が目に浮かび、映画の余韻がさらに増幅した。
かづゑさんの著書をぜひ読んでみたい。
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