SSブログ

(映画)『紙屋悦子の青春』(2006年 黒木和雄) [映画]

四幕ものともいえる構成で、二時間を費やして、四つのシークエンスをじっくり見せる。そしてそれらをできるだけ長回しで撮ることによって、日常のさりげない会話、戦時下であってもユーモアのある会話をすくいとろうとしている。
『美しい夏キリシマ』は予想外の映画の静かさに違和感が残ったが、『父と暮せば』で、静かさの中に秘めた熱い思いがあることを知った。そして、本作品でもその静かさは徹底している。音楽はエンドロールで使われているのみで、映画中の音は、昭和20年はまわりの音が何もしない家の中に時計の音が響きわたるのみ。(この時計をさりげなく大きくしたりしているところが重要な効果をもたらす。)現在のシーンでは、遠くに工事をしているような音が聞こえる。過去と比較するとまわりの音がやかましい。
そして、両方で登場する波の音。波の音は、夫の友人でもあり、妻のあこがれでもあった士官の存在そのものだろう。その音を、第四幕の士官の死が告げられた際に主人公が聞くとき、すでに主人公の中では、気持ちの整理がつけられていて、士官は波の音として記憶の中にある。それはそのまま現代で波の音に耳をすませる夫婦の記憶と重なっていく。
主人公の号泣シーンを写す必要があったのかということと、昼のシーンも夜のシーンも室内の照明が明るすぎること、の二つが気になった。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0