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(B)『瓦礫の死角』(西村賢太著 講談社刊) [本]

四つの短編を収録。
最初に二編は、北町貫多十七歳時の話で、続き物のようになっている。著者の最近作に傾向であるところの、派手なクライマックスで読ませるのではなく、文章のおもしろさの中に内省的なものが顔を出す仕掛けになっている。『パラサイト』を見て、魔太郎を思い出したばかりだったので、四三頁に「彼はがんらいがひどく復讐心の強い、魔太郎じみた性質にもできている。」という文章があって、ひとりほくそ笑んでしまった。
「四冊目の『根津権現裏』」は、新川との会話の妙を楽しむとともに、「もっとシンプルに云えば、その道を進む上でのパスポートみたようなもの」「絶対に取りこぼすことのできぬ必携のアイテムであり、パスポートである」というハイカラな言い換えが面白かった。
最後の「崩折れるにはまだ早い」は、主題を与えられた企画もののようだが、北町貫多と思われる--名前はでてこない--渠(かれ)が、途中で藤澤清造に変わって話がつながっていくところが見事。主人公の脳裏に浮かぶ最近亡くなった作家のうち、車谷長吉と思しき人の前後は誰かと思っていたら、芥川と田山花袋だったとは!
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