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(映画)『市子』(2023年 戸田彬弘) [映画]

主人公の市子はあまり画面に登場しない。
冒頭、アパートの部屋から逃げ出す市子。求婚されて喜んでいたのに姿を消してしまったことがわかる。求婚した男が、彼女を知っている人を求めて彼女の過去を辿っていくうちに、彼女の行動が少しずつわかってくる仕掛け。白骨死体が発見された事件もからんで、刑事も彼女を探している。(刑事の聞き込みに男が同席するという昔の刑事もののような設定は微笑ましかった。)
時制や対象となる人物を交錯させて、彼女の人となりを描く手法はうまい。とりわけ説明せずに想像させる部分を多く残しているところが秀逸。それによって見る者は、市子がどのような思いを抱いていたのか想像し、心の痛みを知る。
最後、新しく手に入れた名前で、これから新たな人生を歩いても、同じことが繰り返されそうな部分は気がかり。
省略が見事ではあったが、一度は本気で洋菓子屋をやろうと思ったのをなぜ諦めたのかという部分は知りたかった。
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