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(映画)『あゝ野麦峠』(1979年 山本薩夫) [映画]

「野麦峠」の話は「女工哀史」と結びついて、過酷な労働に従事させられた女性たちの悲劇と理解しており、基本的にはそのとおりだが、そうならざるを得なかった社会背景があったことがわかった。14歳の娘たちは、家にお金を入れるため、家の食い扶持を減らすため、望んで参加していて、「百円工女」になるという目標や、仕事の合間の楽しいひと時などもあったことを活力あふれる映像で描いている。
少女たち個々に起こる悲劇のあとに、それをすぐ忘れるのが日常とでもいうように明るい場面が続くのは、少女たち全体は世界に誇る日本の製紙産業の立役者という描き方。また、経営者側を悪と描いていないため、女性に非道い仕打ちをする男たちに懲罰が下されない。
原作は小説ではなく、取材を基にした事実とのことで、最後に主人公が野麦峠で亡くなるのも本当の話とのこと。彼女の死の知らせを聞いて、女工たちが仕事を放棄する場面はクライマックスのための作劇で、中途半端に思えるところもあったけれど、あの程度がおさまりのよいところ。
冒頭、雪を踏みしめながら山道を歩く少女たちの列を捉えたカメラがズームアウトすると手前の道を歩く少女たちが写り、さらにそのカメラの前を横切る列が現れる画には驚嘆した。
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