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(V)『故郷』(1937年 伊丹万作) [ヴィデオ]

冒頭、少年が姉が帰って来ると大喜びしている。舞台は、信州のアルプスのふもとの村。少年の家は酒屋で、姉は東京の女学校を同じ村の金持ちの娘とともに卒業して戻って来たのだ。家には母親と長男が居て、長男が懸命に働いて彼女の学費を出したことがわかる。
物語は、東京で先進的な思想に触れてきた娘が、田舎の封建的な考え方に馴染めず、特に兄との関係が悪くなっていくというもの。どちらかと言えば、娘がわがままに描かれていて、コツコツと働くことの尊さを強調する内容になっているが、この時代、浮ついた都会の若者批判の風潮があったのだろうか。
その中で、自ら正しいと思ったことをなすといった風情の少年と、校長の金持ちの生徒優遇策に反旗を翻して学校を辞めてしまう教師の存在が、話に膨らみを持たせる。
伊丹監督は、溶暗を多用して、これらの人物の様子を交互に活写する。
とうとう家を出てしまった娘が、その間何をしていたのか描かれない--日めくりがどんどんめくれて時の流れを表すのは無声映画の名残--が、働くことの大変さを知って、家に戻って来るという結末。
2年ぐらいの時が経っていたはずだが、少年が前と同じだったのが、少し気になった。
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