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(映画)『恐喝(きょうかつ)』(1963年 渡邊祐介) [映画]

この映画が公開された年は、ヤクザ映画元年で、まだ一般的ではなかった。この作品でも、ヤクザという言葉は使っていない--本人は「不動産屋の幹部社員」と称していた--けれど、この主人公はまぎれもなくヤクザだ。それは禁欲的ということではなく、自らを半端ものと自覚して、わざと露悪的に振舞うことであり、また貧乏な出自の主人公は、優雅な暮らしをしたいという野心を人一倍持っている。
彼が、身の隠し場所を出奔した故郷--江東区の大島あたりでロケをしたよう--に求めたところがよく出来ていて、彼はそこに暮らしていたころの記憶と、周囲の友だちによって、自らの立ち位置を再認識することになる。
「大きな仕事はひとりでする」主義の主人公と、彼を慕う弟分が、親分に命じられて彼を殺そうとして犬死してしまう場面に続き、彼が孤軍奮闘して殺されてしまうまで、一匹狼の哀愁が漂っていた。石炭の山の上からずり落ちて来る場面の鮮烈さが印象的。
キャバレー場面で、潮健児がひとりドラムスを叩いている場面があったが、実際にドラマーだったのだろうか。
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