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(映画)『さよならほやマン』(2023年 庄司輝秋) [映画]

キワモノか、地方映画かと思ったらさにあらず。庄司監督は石巻の出身とのことで、東日本大震災に今でも苦しんでいる人たちがいることをどうしても描きたかったようだ。劇中では、多部島と架空の場所を舞台にしているが、ロケは石巻の近くにある網地島とあった。
ホヤ獲り漁師の兄と、震災で精神を病んでしまった弟の二人暮らしの家に、東京にいられなくなった女性漫画家が強引に押しかける。借金で首の回らない兄が、家を買いたいと札束を見せられても、積極的に動かないのは変だなと見ていたら、震災で海に消えた両親の帰りをずっと待っていたのと、海で獲れたものは一切口にせず、それで兄弟ともカップ麺ばかり食べていたことがわかってくる。
兄弟及び漫画家が、互いに傷を癒して回復していく流れは既定路線だが、庄司監督は、ゴツゴツしたものをちりばめ、安易な結末へもっていかない。精神の均衡が崩れてしまったのは、弟だけでなく、兄もなのだ。島から見る美しい海の風景と、そこに暮らす人々の気骨ある言動に心打たれる。
ほやマンの動画を撮って金を稼ぐという発想が突然出てくるところは、ちょっと短絡だったが、ほやマン自体父親が考案したもので、動画の挿話が劇中で浮いてはいなかった。
最後、一緒に暮らすといっていた漫画家が東京へ帰ってしまったというのが意外で、手紙の内容が「さよならほやマン」だったとしたら、もう戻って来ないとなるのだが。。
最小限つけられていた音楽は大友良英。最後にボ・ガンボスの「あこがれの地へ」が流れるのは、庄司監督の趣味と思われるが、最高の選曲!
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