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(映画)『私は忘れない』(1960年 堀内眞直) [映画]

有吉佐和子が昭和34年に発表した小説--三島村のホームページは年号が間違っている--の映画化だそう。
著者の意図は、鹿児島県の黒島を世間に知らしめることにあったようで、映画も現地でロケ--船が接岸する港の様子が興味深かった--をし、島の様子や人々の暮らしを紹介することを第一義としている。解説の音声は、小説の地の文を読んだのだろうか、島に関するさまざまな情報提供をしてくれ、ドキュメンタリーの趣きがあった。
とは言え、創作話にした意味は、たとえば島にある二つの村の仲が悪いため、それぞれの村出身の男女に悲劇がもたらされるとか、嵐によって命の危険が生じる状況、病気になったら死を覚悟しなければならないなど、ドキュメンタリーよりより切実に見るものの心に響く。
島の状況を描くことに力を注いだため、ドラマとしての主人公の恋愛話は、中途半端で、心を癒す旅--たったの十日間とは思えなかった--から東京へ帰った女性も、島にTVを贈って終わりとは、「遠地」に赴任させられた先生がちょっと可哀想だった。「忘れない」のは、彼のことではなく、島とそこに暮らす人々が居ること。
鬼の面をかぶって、櫂のようなものを持って踊る、現地の伝統芸能も写していた。
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