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(V)『北方に鐘が鳴る』(1943年 大曾根辰夫) [ヴィデオ]

明治維新後の屯田兵に材をとった話。屯田兵に関する知識を持たないが、この映画では維新で失職した武士たちを政府が北海道を開拓するために派遣したとなっている。そこに江戸時代まであった仇討ちを盛り込み、さらにはアイヌ民族も登場させる。
主人公兄弟は、新発田藩の出で、父親の仇を追って北海道に来て、仇を討った際にアイヌ部族の酋長も殺してしまう。仇討ちを認めない警察とアイヌ部族から追われて逃げるのだが、関係ない酋長も殺した上に逃亡するという行為の主人公には共感できない。
それよりも、主人公--といっても弟の方--に塾の先生を依頼し、彼と妹を保護する屯田兵の村の村長を始めとする人たちの立派さに目が向く。彼を差し出さないと村として西南戦争に加われないという状況でのギリギリの協議場面が見どころ。
新政府--天皇--のために戦うことを第一義とするところに、この映画が製作された時代背景が反映していると思われるが、兄が自首したことで弟を差し出さなくても済んだという結末。(ただその知らせが間に合わず、アイヌ部族に襲撃されるという展開はしっかりある。)
映画製作が厳しい時代にも関わらず、珍しい題材を取り上げた野心作。
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