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(V)『にっぽん泥棒物語』(1965年 山本薩夫) [ヴィデオ]

敗戦後まもない時代の土蔵破り泥棒が主人公。
大勢の仲間と組んで、十分な下調べをしたのち、夜陰に乗じて土蔵の壁に穴を開けて、着物などの品を持ち出して売りさばく。盗みをする方法や、盗む品を売りさばくところまで、まさに混乱している世の中ならではの犯罪。とはいえ、ちょっとしたことから足がついて、刑務所に四度も収監される。
それらを活写していた映画は、途中から調子が変わり、妻をもらって主人公が更生する様と、彼が盗みを失敗して逃げる途中で目撃した蒸気機関車を転覆させた「杉山事件」の犯人に関する証言をどうするかという話に変わっていく。(悪人が善人になるのは、「飢餓海峡」いや「レ・ミゼラブル」式ではあるが、この主人公は結婚や歯科医開業も受け身で、母親の死によって更生するという優しい性格に好感が持てる。)
皆の前で目撃したことを証言すれば、大切に築き上げた家庭が崩壊してしまうけれど、冤罪で死刑になる人たちを助けられるという板挟み状態。結局、彼は冤罪を雪ぐため法廷に立つのだが、正直かつ無邪気な回答をして、検察の意地の悪さを笑いのめして勝つという構図が見事というほかない。
一旦は彼に愛想をつかした妻も、傍聴席で見ているうち、嫌悪の表情が次第に他の人たちと一緒に笑うようになって、最後は彼を祝福するとなるところは、余分な説明を排した何よりの結末。
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