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(映画)『フジヤマコットントン』(2023年 青柳拓) [映画]

青柳監督の新作は、住んでいる場所の近くにある障害福祉事業所の利用者を写したドキュメンタリー。説明をまったく付さない作り方は、ワイズマン方式だが、ワイズマン監督ならば、事業所の経営にまでカメラを向けるところだが、青柳監督は、利用者にのみ集中する。
真っ白になっている富士山が、すっかり山肌を表したのち、また少し雪の跡が見える様子は、一年近くかけてじっくり撮影されたことがわかり、る人と被写体の間に生まれた親しい関係は、カメラに向かって自然に話をする場面に結実している。
青柳監督の個々の人たちを見つめる優しさを理解したこからこそ、利用者も家族も撮影を許可したのではないか。まさに青柳監督にしか作れない作品。
B型支援である、裏の畑で綿花を育て、それを糸にして織物を作成して販売する事業は、ここならではの特徴で、だからこそ、題名にもなっている。朝のラジオ体操を利用者だけに任せているところも、ここならではと思われ、その場面が微笑ましかった。
織り担当の二人の女性が、互いの服を織り合う場面が見所のひとつだが、完成した服をさりげなく、最後のそれぞれの写真で見せる演出が心憎い。利用者全員が、富士山が顔をのぞかせる方向へ歩いていく最後の場面も素晴らしい。
「仕事とは何か」との利用者の問いに対しては、「みらいファームで自分が熱中できるもの」と回答したい。
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