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(V)『黒の奔流』(1972年 渡邊祐介) [ヴィデオ]

最初の殺人事件は、彼女が持っていたお札の指紋や、隠していた手帳など、いくらでも証拠が出てきそうに思えたが、そんな細かい所にこだわっていてはいけない。この話で大切なのは、野心家の弁護士ががんばって彼女を無罪にしたという事実なのだ。
日々のつまらない案件に倦んでいる弁護士は、有名な先生の娘と結婚し注目を浴びたいという気持ちが強いが、その割には女にだらしがない。一方、無罪となった女性は、社会的に弱い存在ではなるが、やさしくしてくれた男を自分のものにして離さないといいう狂気じみたところがある。
この二人に加え、事務所で働く女--一番したたかと言えるが--の性格描写が素晴らしく、文字通り役者に不足なしという感じ。
弁護士と女が最後に破滅してしまうのは、自業自得なのだろうか。否、彼女が駅で顔見知りの客に遭わなければ、このような結果にはならなかっただろう。すべては、天のいたずらで、これが人生なのだ。
ドリフターズのTV番組を見ている場面が出てきたが、ドリフ映画を多く手掛けた渡邊監督の遊び心か。印象深い主題曲をつけていたのは渡辺宙明。
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