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(映画)『火女 '82』(1982年 キム・ギヨン) [映画]

1971年の『火女』に続く、『下女』二度目の再映画化。カラー作品となって--71年版もカラーだが--、冒頭殺人現場を検証する刑事の足元に散らばるステンドグラスの派手な色が、二人の女性が夢見た幸せな生活が砕けたものとして、登場した。
音楽家が、自らの罪のために罰を受けるという図式より、妻と家政婦が次第に狂気を帯びてきて、男は被害者のように見えてくる。キム・ギヨン監督の特徴である女性に加担する視線より、女の嫉妬、男に対する強い気持ちが前面にでている。
それを見せるのに、家政婦が髪の毛をくわえるしぐさをするといった小悪魔的態度や、衝立や窓越しに部屋を覗く場面が頻出する。物体越しに人物を写す画--文字通り手前に火が燃える画面もあり--は曾根に代表されるロマンポルノのようだったが、キム監督は日本で見たことがあったのだろうか。
家政婦が、音楽家とともに死ぬ場面では、二人の体に金粉のようなものを施すというキム監督には珍しく幻想的な演出をしていたが、彼女の幸せもそこまでで、「最後の時間は妻に捧げる」という男のひと言で、階段での修羅場となる。
動物を怖いものと思わせる異化効果も健在で、ネズミだけでなく、人間をミンチにしたエサを食べたら卵が大きくなったというニワトリも。
男は時代に合わせて、音楽家といっても歌謡曲の作曲家で、「愛の火女になった」と歌う自作の曲を売ろうとしているところが面白かった。二階の部屋に柱時計がたくさんかかっていたのは、まるで実相寺。
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