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(V)『ジュピターズ・ムーン』(2017年 コーネル・ムンドルッツォ) [ヴィデオ]

人が突然宙に浮き上がるという荒唐無稽な設定。それを違和感なく見せる撮影が素晴らしい。それだけでなく、冒頭の森の中を逃げる主人公を追う高速の横移動や、宙に浮いた主人公とともに部屋がぐるぐる回る場面など、いったいどうやって撮ったのかと驚くことしきり。(医者が撃たれて主人公と昇降機に乗り込む場面のワンカットや、最後のガラスを割って外へ飛び出る場面のワンカットもすごかった。)宙に浮くのは『ゼロ・グラビティ』、人混みを縫いながら移動するのは『バードマン』でエマニュエル・ルベツキが見せた技のよう。
この設定が、主題となる物語を見事に支えている。ハンガリーで実際起こっていることなのかわからないが、賄賂や権力者の横暴がはびこる社会で、シリア難民と少年に関わることで、医師が自らを見つめなおすという話。
彼だけでなく、宙に浮く少年を見上げる人たちは、空を見上げて自らの行いを振り返り、息をつく。
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