SSブログ

(映画)『高麗葬』(1963年 キム・ギヨン) [映画]

韓国の山あいの村が舞台。『陽山道』同様、昔の話のようだが時代はわからない。
占い師の女が神のお告げを伝えたり、七十歳になったら子が親を山に捨てに行く風習があったり、男ばかり十人の兄弟、女ばかり九人の姉妹が登場するなど、物語の枠は民話の世界。しかし、30年以上にもわたる話の主眼は、貧乏や日照りによる飢えという現実。
キム・ギヨン監督は、娘を生贄にするとか、首をくくらせるとか、最後は斧で仇を殺しまわるという非情な描写を織り交ぜながら、過酷な現実を見るものに突きつける。そこには『陽山道』にもあった、母の息子に対する愛情--逆の愛情も--や、「女は一生腹いっぱい食べることがない」という女性の立場の弱さ、足や目が不自由な人、あばたの娘への差別といった主題も盛り込まれている。(男十人は、主人公にやられるまで欠けることがないのは男性優位の証左。)
主人公が足が不自由になる原因となった毒蛇、山に捨てられた母親が鷹に食べられてあっという間に姿かたちがなくなるという動物の使い方もキム・ギヨン監督らしい。
古い因習を断ち切らんとする主人公の強い思いに感動した。
nice!(0)  コメント(0)