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(B)『苔の笞』(赤羽3郎著 柏艪舎刊) [本]

「丸山健二文学賞 第3回受賞作品」とのことで読んでみた。(著者の名前はそれにちなんだのか?)
ひと段落百四十字が、一字たりとも足りなかったり多かったりすることなく、最後まで連なる『千日の瑠璃』で丸山がやった手法と同じ。硬質な文章や、ひとつの物をさまざまに言い換えて描写するところなども丸山っぽい。指導が行き過ぎたのか、それともそれほど心酔しているか。物語も丸山の若いころを思わせるものがあり、これでは丸山の亜流ということで片付けられてしまうだろう。
独自性を感じたのは、『非行少年 陽の出の叫び』のように主人公が、今を振り切って新しい生活に踏み出すところと、本の題名。「苔の笞」とは、苔が生えているような古臭い伝統にとらわれ、役にたたない笞におびえている主人公の様子を表しているのだが、「むち」を「こけ」に似ている「笞」の字を使ったところに工夫がある。
また、章立てを「一」と「二」の繰り返しにしているのは、文章中にでてくる自衛隊の号令に合わせていて、主人公がそこを離れると決意した最終章で初めて「三」が現れる。
著者の次回作を期待したい。
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