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(V)『嫁の立場』(1953年 西河克己) [ヴィデオ]

『宇野信夫作「のれん」より』という副題が付く。
佃煮屋の隠居が、汁粉屋の粋な姐さんに惚れて、どんどんお金を渡してしまう。家族に気づかれ、娘夫婦の家で監視下に置かれるが、人目を盗んで汁粉屋通い。他の事情があるのではと勘繰ったが、44分の小品なのでそんなややこしいことはなく、女とその情夫にだまされていただけだった。(だまされていたことが発覚する場面は、見事な省略)
この映画は、舅がだまされているとわかっていても、舅のこれまでの働きに感謝して、指輪を質にいれてもお金を融通してしまう息子の嫁と、娘夫婦の家に間借りをした姑を邪険にする嫁を登場させ、嫁にもいろいろあるところを見せる。狭い家に三人で暮らさなければならない嫁が、一方的に悪いとは言えないけれど、彼女の冷淡な仕打ちに対して、主人公である隠居が直接意見するところが、新鮮だった。
家庭の機微を見せる松竹の王道を行く話を、西河監督が見事に演出してみせたのだが、この後、長編を撮る機会がつぶれて、日活へ移籍することになる。
父親にねだってタップダンスの靴を買ってもらう娘を演じる野添ひとみが、中年出演者の中にあって、映画に活気をもたらしていた。
「田舎に行くと水が変わるので気をつけて」という挨拶があった時代。
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