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(V)『炎の城』(1960年 加藤泰) [ヴィデオ]

開巻、ピアノ音が低く鳴り渡る音楽は、伊福部であることがすぐわかった。前作『あやめ笠』は、第二東映、白黒であったが、カラー大作のこの作品を見れば、このあたりで、加藤監督の主番組を担う位置が固まったのだろう。
話は「ハムレット」の翻案だそうで、自分が留守の間、父を殺し城主となった叔父に復讐を果たす話。主人公が父親の幽霊を見たり、叔父を殺す機会がありながら止めてしまう場面に唐突感があったが、そこが「ハムレット」を踏まえた部分か。
主人公が最初から復讐の鬼のように凄まじい形相で登場し、そのまま重苦しい雰囲気が続く。恋人である姫が、父や兄の意に背いてまで主人公に従うという熱情をみせるが、それも報われない悲劇の結末。重厚な伊福部音楽はその雰囲気にふさわしい。
主人公が活躍するのではなく、農民が城に火をつけて城主以下壊滅するという流れは面白かった。(時代の空気を反映していたのかも。)農民を助けらなかった主人公も、本来退場すべき存在だったろうが、誰かに統治してもらう必要があるなら、主人公が一番よいとなるのだろう。
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