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(映画)『人間の時間』(2018年 キム・ギドク) [映画]

邦題も元と同様、「人間、空間、時間、そして人間」の方がよかったのに。物語は、字幕とともにこの四つの部分に分かれており、以下のように要約できる。
1.戦艦に乗り合わせた人々の貧富の差、男女差別によって事件が発生する
2.戦艦が突如空に浮かんでいて、助かる方法がわからないため食料問題が発生する
3.食料が尽きで何が起こったか、そして時間が新たなものを生産する
4.無事生き延びたが、結局1が繰り返される
この作品は、過去のギドク作品に比べれば、目をそらしたくなるような場面になると、赤裸々にどぎつく見せないようにはしていた。にもかかわらずすこぶる不快になるのは、人間たちの本性があまりに醜いから。権力者である議員ばかりではない。食料に群がる人々や、最愛の人が殺されても、バナナにむさぼりつく女性なども。
各部分で描かれている主題はとても明快で、セリフにもあった「神が人間の限界を試している」のだと言える。その中で、唯一何を表象しているのかわからなかったのが、ひと言も口をきかない老人。彼は『春夏秋冬そして春』の主人公のように、自らの使命があらかじめわかっていて、それに則っている行動しているようだ。船が空を飛ぶ前から土を集め、それぞれの事件を必ず目撃しているが、決して手出しはしない。神もしくは神の使徒とするよりも、賢しらな人間と解釈した方が、人間に対する希望をすべて打ち砕かれるようなこの話にあって救いとなるように感じる。
時間の経過が、植物を育て、鶏から卵が産まれた。しかし希望として生まれたはずの息子は、やはり欲望のままに生きる人間になってしまったという絶望で終わってしまう。
『悲夢』の続きのように日本語で意思疎通ができてしまうオダギリジョーが、早い段階であっさり退場となってしまのがちょっと可哀相。。
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(V)『若葉学園♡チェリーボーイズ』(2008年 城定秀夫) [ヴィデオ]

チェリーボーイズ=童貞少年、ということで、三人の少年が主役の「パンツの穴」的喜劇。
三人しか部員がいない落研。主人公はひとり落語の研究に余念がないが、他の二人は童貞を卒業したいと妄想の毎日。そこへ東京は秋葉原から可愛い女子が転校してきて、主人公が夢中になる。彼女はコスプレ研究会を作りたいから部室を分割しろと、落研の部屋が『或る夜の出来事』式カーテンで仕切られてしまう。
二人が、風俗に行くお金を貯めようと居酒屋でアルバイトをして、居酒屋の女将とその娘それぞれといい仲になり、さあいよいよという時に、意中の男--海に消えたはずの夫(森羅万象)が、海から戻ってくる!--が戻ってくる状況が並行した起こる場面は爆笑してしまった。
一方、主人公は学園祭の落語で彼女への思いをぶちまける。普通なら省略してしまうところ、城定監督は落語を見せるという力業を繰り出す。「猫の皿」の最後、映画の中でも外でも、見ている人は見事にオチた!
大正時代の落語名人が現れて「自分をさらけ出せ」と主人公に助言するなど、女の子は脇の扱いの男子高校生の成長物語であった。
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